【報告】バリ島国際ワークショップ
「トランスカルチャー状況下における顔・身体学」

2018年3月1日から5日にかけて、A01-P01床呂班のオーガナイズにより、領域関係者によるワークショップ「トランスカルチャー状況下における顔・身体学」がインドネシア・バリ島のサヌールにて行われました。

ワークショップには領域代表をはじめ、文化人類学・実験心理学・哲学の各班から20名超が参加しました。

舞踊・仮面製作・絵画などのバリ島の芸術文化の見学や体験、パフォーマーやクリエーターとの交流、そしてワークショップやフィールド実験チュートリアルを通して「顔・身体学」研究における異分野間の融合を一層進めることができました。

ワークショッププログラム

  • 吉田ゆか子+イ・クトゥット・コディ「仮面と踊る-演者イ・クトゥット・コディ氏を迎えて」
  • ユスティナ・デヴィ・アルディアニ 「サヒタのパフォーマンス-風刺劇の舞台における女性たちのボディーランゲージ」
  • バリ舞踊ワークショップ
  • 高橋康介「フィールド実験チュートリアル」
  • 吉田優貴「一緒に躍るという経験:ケニアの聾の子供を事例に」
  • 菊竹智之「知的障害者たちのダンスにおける顔の働き」
  • 赤阪辰太郎「〈顔〉と〈わたし〉の現象学」

ワークショップおよびイベントなどの様子

バトゥアン美術館に飾られた仮面の数々 (撮影: 高橋康介)
仮面を見学する領域関係者 (撮影: 高橋康介)
伝統舞踊の見学 (撮影: 高橋康介)
伝統舞踊のパフォーマーとの質疑応答 (撮影: 河野哲也)
伝統芸能の仮面舞踊の様子 (撮影: 河野哲也)
ワークショップの開会挨拶 (撮影: A01-P01床呂班)
仮面舞踊のパフォーマーによる講演 (撮影: A01-P01床呂班)
パフォーマーの指導による伝統舞踊体験 (撮影: A01-P01床呂班)
ワークショップでの質疑応答の様子 (撮影: A01-P01床呂班)
領域代表による閉会挨拶 (撮影: A01-P01床呂班)
スティア・ダルマ仮面と人形の家(博物館)に展示された影絵劇の人形 (撮影: 河野哲也)
フィールド実験チュートリアルの様子 (撮影: A01-P01床呂班)
仮面製作者による実演と講演 (撮影: A01-P01床呂班)

体験記その1

今回の国際ワークショップで私は初めてバリを訪れた。空港についてからホテルまで移動する間、車窓から見えるものすべてが新鮮だった。特に時おり出現する巨大な石像が印象的で、バリの歴史や神話を勉強せずにこの国に来てしまったことを後悔した。

2日目以降のエクスカーションやワークショップでは舞踊や仮面といった、博物館やテレビ以外では触れたことのないものをじかに体験することができた。パフォーマンスやお話自体が印象的だったのはもちろんだが、私はパフォーマーの方や職人の方と親しく話をされている吉田ゆか子さんの姿が印象的だった。その姿に、これまで少しずつ築き上げてきた相手の方との関係と、これまでの時間を垣間見た気がした。私は普段、実験室で人や鳥を対象に実験を行っている。意思のある相手が存在する研究という点で共通しているが、実験室での実験においてはたいていの場合、相手との関係は一期一会に等しい。鳥については実験後も飼育室で見ることはあるが、はっきりとした意思疎通はできないので、関係を築くというよりはこちらが一方的に好意を持つだけだ。それはそれでおもしろみがあるのだが、フィールド研究ならではの相手との関係のありかたに憧れのようなものを感じた。

また、最終日に参加者全員でお昼を食べた際、床呂班の方々が研究対象の地域のごはんについて話をされていたのも印象的だった。実際にその地域に行って研究するフィールド研究ならではだと思った。余談ではあるが、バリ滞在中に私が感動したことはほかにもある。それは最終日にお昼を食べたレストランでキバタンと思しき大きな鳥を腕にのせて触ることができたことだ。鳥を愛してやまない私にとって至福の時間だった。耳のあたりをさわると目を細める姿が愛らしく、連れて帰りたいくらいだった。短い時間だったが、素敵な体験ができた。

最後に、ワークショップを率いてくださった床呂班のみなさまに感謝申し上げます。滞りなく、そして楽しく過ごせたのは、ひとえに床呂班のみなさまが準備してくださったからです。ありがとうございました。

(B01-P03 田中班・東京女子大学大学院人間科学研究科 澤田佳子)

体験記その2

平成30年3月2日から4日にかけての3日間、インドネシア・バリ島のサヌールで国際ワークショップ「トランスカルチャー状況下における顔・身体学」が開催されました。バリ島に行ったのは今回が初めてであり、体験するもの全てが新鮮でした。3日間の充実したワークショップを通して、現地の芸術文化や生活環境を知るだけでなく、顔・身体学と関わるバリの伝統芸能に対する人類学、心理学、哲学班からの多角的なアプローチを学ぶことができ、多くのことを勉強させていただきました。

今回のワークショップを通して特に印象深かったのは、バリ島の伝統舞踏中における仮面の果たす役割の大きさです。舞踏の内容によって役柄に応じた仮面を身につけ、仮面の人物にあわせて身体を動かすことで、見ている人にまるで仮面の人間が目の前にいるかのような印象を与えていました。仮面であるため決して表情は変化しませんが、身体との相互作用により仮面の人物の感情の機微を感じ取ることができ、仮面の人物が本当に生きているという実感を得ました。舞踏するパフォーマーの方から、仮面の役にあうように自身の動きや感情を近づけるのか、あるいは仮面をつけても自身の感情をベースに身体を動かすのかについて、どちらか正解というものはなく状況によって変わるということを聞き、必ずしも仮面の人物に合わせているわけではないということがわかり驚きました。見ている私からすると仮面の人物を演じているパフォーマーという印象でしたが、実際に踊っているパフォーマーの心理は私の心理とは一致していない可能性があり、踊り手と受け手の間で連続的な心理の変化があると感じました。伝統芸能から人間の心理について考えるきっかけを得ることができ良い経験となりました。

実験心理学のフィールドワークについても実際の現場を見ることができ大変勉強になりました。大学での実験環境とは異なり、統制の取りにくい環境の中でいかに実験を行い、データを取るのか。心理学の実験を行う上で重要なポイントを再度確認することができました。

海や豊かな自然に囲まれた温暖な環境の中で、自身の研究領域である心理学だけでなく、人類学や哲学班の方々とディスカッションすることができ、とても刺激的な時間を過ごすことができました。私も自身の研究を通して本領域に貢献することができるよう、日々研究を進めていきたいと思います。ワークショップを運営してくださった先生方、3日間お世話になりました皆様、本当にありがとうございました。

(B01-P01 山口班・中央大学大学院文学研究科心理学専攻博士前期課程2年 鶴見周摩)

体験記その3

今回の国際ワークショップで私たちが多く目にしたのは、バリにおける「顔」であったと思います。舞踊や仮面、絵画にみられる「顔」ばかりでなく、道行く人々や其処此処で遭遇する神々の像の顔・・・・・・。バリで多くの「顔」と出会い、「顔と出会う」ことについて考えさせられた日々でした。

はじめにそのことを実感したのは、バリ芸能を鑑賞したときだったと記憶しています。ここで私たちは、仮面舞踊劇と、仮面をつけない舞踊を鑑賞しました。舞踊の(化粧の)踊り手たちが一様に、微笑みを浮かべながら大きく見開いた瞳孔を動かして生み出す表情と、仮面をつけた踊り手が、演技によって仮面に与える表情。躍り手の化粧の顔と仮面の顔とは、対照が際立っているように感じられました。同時に、バリ舞踊に特有の身体技法を目の当たりにすることによって、それがバリ文化のなかで自然に身についた技法ではなく、長年の訓練によって獲得していく技法であることも体感することができました。一見対照をなすように感じられた踊り手の表情と、仮面の表情が、仮面の裏側を通して繋がっていることもまた、興味深いことでした。

それにしても、バリにおける仮面の多種多様さには目を見張るばかりでした。今回の企画の中心となった吉田ゆか子さんの研究から多くを教えていただき、共同調査を試みている私にとっては、再発見と新たな発見の連続でもありました。というのも、仮面のなかには、ヴァロンやランダといったヒンドゥ教の存在もあれば、王族たちのもの、そして一般の村人たちのものもあり、伝統的なものから、(日本の能面の手法を取り入れたような)モダンなものまであります。そこに作り手や躍り手、そして観客たちとの関係性も織り込まれていることから、一つ一つの仮面がもつ社会的文化的意味合いや、その仮面が埋め込まれている社会や文化のありように、改めて圧倒させられたのです。今回のワークショップでのご発表や訪れた仮面工房で伺ったお話からは、木材というモノが仮面という顔(身体)になるプロセスと、仮面というモノが生(命)を帯びるプロセスの両方を垣間見たように思います。

バリという実地において、顔や身体表現の文化差に実際にふれることができる機会となったばかりでなく、「フィールド実験」といった他のアプローチのみならず、ケニア、ジャワ島、そして日本における事例に基づいた各研究班の方々のご発表に学ぶことが多くありました。こうした機会を実現してくださった今回の国際ワークショップの企画担当者の皆様に、ここに記して感謝の意を表します。

(A01-P01 床呂班・東日本国際大学健康福祉学部 田中みわ子)

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